胆振地方で増えるカササギ
北海道では1980年代から各地で目撃されており、これまで江別、浦幌、羅臼、稚内などで目撃報告があります(堀本 2004, 藤巻 2012)。
北海道内でカササギが定着したのが胆振地方です。
黒沢・堀本(2015)によると、室蘭では1984年に2羽が観察されていますが、定着にいたるきっかけとなったのは90年代に入ってからだと思われます。まず1992年に数回目撃され、翌1993年にはじめて営巣行動が観察されています。その後、1994年から2003年頃にかけて室蘭から東側の登別や白老に分布を広げたようです。さらに2004年以降、西側の伊達にも分布が広がったようです(黒沢・堀本 2015)。
苫小牧のカササギ
現在北海道内でもっとも多くのカササギが繁殖しているのが苫小牧市です。
村井雅之氏によると、苫小牧で繁殖するようになったのは1997年頃とのこと。当時記録されていたのは1羽から6羽程度で、苫小牧市の中心部と勇払の市街地周辺でカササギの姿を頻繁に見るようになったのは2001年頃だとのことです(村井 2013)。
2011年にカササギのものとみられる大きなまん丸の巣を、苫小牧市内で探し回ったところ、70~80巣くらい見つかりました(長谷川ら 未発表)。その中には使用していない古巣なども含まれるかもしれませんが、逆に作りかけの巣(カラスの巣と判断)や未発見の巣もあるでしょうから、だいたいそのくらいの数の巣があるだろうと思います。1巣につきオスメス1羽ずついるとして、さらには繁殖していない個体などもあわせると、乱暴な推測ですが、およそ200羽程度はいるのではないでしょうか。
ということは、苫小牧市内のカササギは10~15年くらいの間に急増したと考えられます。
札幌方面へ
近年は、沿岸部である苫小牧などから、内陸に分布が広がっています。千歳市や恵庭市でも営巣が確認されており、さらには札幌市でも繁殖が確認されるようになりました。
中村眞樹子氏によると、札幌市では2008年の冬に手稲区で目撃されたのが最初の記録だそうです。そして2011年に、同じく手稲区の送電線鉄塔に巣を作ったのが、初の繁殖確認となります(中村 2013)。2016年には、少なくとも3~4か所で造巣が確認されており(長谷川 私信)、つがいらしき個体の目撃情報を含めると、さらに多くの個体が繁殖を試みているのではないかと思われます。個体識別ができていないため定かではありませんが、目撃される範囲も広がっており、今後の札幌での分散や定着が注目されます。
参考
堀本富宏(2004)北海道胆振地方におけるカササギの記録. 山階鳥学会誌 36:87-90
黒沢令子・堀本富宏(2015)北海道胆振地方におけるうカササギの分布の変遷. 山階鳥学会誌 46:83-88
藤巻裕蔵 (2012) 北海道鳥類目録改訂4版. 極東鳥類研究会・美唄
村井雅之 (2013) 苫小牧周辺のカササギたち. 日本野鳥の会札幌支部報『カッコウ』354: 4-6.
中村眞樹子 (2013) 札幌市内に生息しているカササギについて. 日本野鳥の会札幌支部報『カッコウ』354: 7-9.