日本国内のカササギの動向
カササギはもともと日本には分布していなかったようですが、およそ400年前に豊臣秀吉の家臣が朝鮮から持ち帰ったことで九州北部に定着したと言われています。その後100年の間に福岡県・佐賀県の有明海沿岸に広げ、それから300年間はほとんど分布に変化がなかったと考えられています(江口 2016)。最近になって九州でも再び分布が拡大しているようです。これまで福岡、佐賀、長崎、大分、熊本で繁殖が記録されています。
北海道では、1990年代から胆振地方を中心に定着し、徐々に分布を拡大しているようです。
北海道内の近年の動向については ⇒北海道のカササギ をご覧ください
日本鳥類目録(改訂第7版)によると、国内では、九州と北海道のほかに、新潟、長野、東京、兵庫、広島、愛媛で繁殖の記録があるようです。インターネットで検索してみるとほかに石川県(金沢市)でも2010年頃に繁殖したという記事がありました。
また、日本鳥類目録に記載されている目撃記録も全国各地にまたがっています(九州と北海道以外では、青森、秋田、岩手、山形、群馬、富山、千葉、福井、愛知、岐阜、石川、滋賀、大坂、島根、山口、佐渡、香川)。
新潟や石川といった沿岸地域だけでなく、長野や群馬といった内陸部でも目撃されていることが分かります。
国内で繁殖を試みた例は、九州や北海道だけではないようですが、ほとんど定着には至らないようです。
カササギは外来生物?
カササギは、古くは飛鳥時代から日本に持ち込まれていたようです。お隣の韓国や中国ではごく普通に生息しているので、昔から人間の手で持ち込まれることは少なからずあったでしょう。
九州北部の個体群は人為的な導入であるとする見解が一般的ですが、その他の地域については、自然分散なのか人為分散なのか意見が分かれるところです。
日本鳥類目録(改訂第7版)では「九州以外は自然分布としたが、移入分布の可能性もある」としており、但し書きつきではありますが、九州以外の目撃例については自力での飛来とみなしています。
北海道庁の作成した外来種データベース(北海道ブルーリスト2010)にはカササギが掲載されており、人為的な移入だと考えているようです。
九州北部では、カササギの生息地が、天然記念物に指定されています。”生息地を定めた国の天然記念物”というもので、指定されているのは佐賀県内の16市町、福岡県の筑後地方の市町村です。
参考
江口和洋 (2016) 総説(モノグラフ)カササギ. 日本鳥学会誌 65(1): 5-30.
日本鳥学会 (2012) 日本鳥類目録改訂第7版
北海道 北海道ブルーリスト2010 http://bluelist.ies.hro.or.jp/
佐賀県 カササギ(カチガラス)の紹介 http://www.pref.saga.lg.jp/kiji0031353/index.html
——————————————-
(2017年2月15日更新: 長谷川理)